2007/09/30

The Alchemist

世界放浪の旅に出るにあたって、たくさんの方からあれやこれや餞別をいただいたが、その中に『The Alchemist』という1冊の文庫本(講談社インターナショナルより刊行)がある。ブラジル出身の作家パウロ・コエーリョが1988年に発表した本著は、ブラジル国内のみならず56カ国語に翻訳されて2000万冊を超える世界的ベストセラーとなり、コエーリョを一躍有名にした作品。10年ほど前に日本語版を一度読んだことがあったが、今回旅のお供にと、英語版を頂戴した。

話の大筋は、アンダルシア地方の羊飼いの少年が、二度夢にみた宝物を探しに、エジプト・ピラミッドを目指して長旅に出るというもの。夢(英語版では「Personal Legends」と訳されている)の実現のために財産である羊を売り、旅の道中様々な人と巡り合い、数々のトラブルに見舞われながらも最後まで夢を諦めずに生きていく少年が描かれている。対照的に登場するのが、同じく旅に出るという昔の頃の夢を諦めて、淡々と日々を過ごすパン屋さん。夢を実現するには犠牲にするものが多いと、現在の生活維持に執着している。

私たちは子供時代、程度の差こそあれ、みな夢と希望に満ち溢れていたはず。(物に溢れた飽食社会の今では、夢を語らず、実利的な考え方しかしないこまっしゃくれたガキンチョも多いようですが。) それが年をとり、経験を重ね、社会的地位や肩書にアイデンティティを求め、失敗を恐れるようになり、車や家など財産が増え、それらを失うことを恐れ、ふと気がつけば物質的にも精神的にもありとあらゆる所有物に雁字搦めにされて身動きが取れなっている。そして、かつて少年・少女の時代に抱いた夢や希望を見て見ぬふりをする(自己欺瞞ともいう)。コエーリョは、この羊飼いの少年を通じ、現実に縛られずにいつまでも夢を持ち続け、それを追い求める勇気の大切さを伝えたかったのだろう。なぜなら人生の美しさとは、夢の実現に向けてのプロセス(過程)において見つけることができるものだから。

英語版といっても英語のレベルは初級・中級。プロットも単純なのでベットに寝そべりながら気軽に読むことができるが、含蓄に富み、心の琴線に触れる言葉や文章が話の端々にちりばめられていて、折に触れて読み返したくなる、そんな物語だ。(…が、ミコノス島行きのフェリーの中に置き忘れてしまったことが判明。本を拾った旅人がそれを読んで、またそれが別の旅人の手に渡って・・・となるならば本望だけど・・・Y.M.さん、せっかくのプレゼントをゴメンナサイ!失笑。でも、ブックカバーとお守りはちゃんと手元に残ってます。)

さて、皆さんのPersonal Legendsは何ですか。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

一緒に旅している気持ちにさせてくれる報告をありがとう!いつも楽しく読んでます。こちらはもう肌寒いくらいです。
あの『The Alchemist』は、ミコノス島行きのフェリーで、さやかさんとは別の旅に出たのね。きっと他の人々が読む機会になると私も思います。
お守りだけは肌身につけて帰って来てね!

タコボウズ さんのコメント...

Y.M.さん、このたびは本当に面目ない話で…。どうやらあの本はあるじと共に旅はしたくなかったようで。一緒にいるのは1ヶ月半でもうこりごりだと。

で、その後、別の本「百年の孤独」も旅立っていきました。というより、飛行機の中で図らずとも置き去りにしてしまいました。かわいい子には旅をさせよということか。でもまだ全部読みきってなかった!(涙)

物にはあまり執着しないほうだと思いますが、それにしても結構すでにいろいろ旅だたせてしまいました。アーミーナイフ、腕時計、本の数々、etc。でも、なくても何とでもなるようで。