2007/08/22

『青い館』

今回メキシコを訪問する最大の動機のひとつであった『青い館』を訪ねてきた。ここはメキシコを代表する女流画家フリーダ・カーロの生家で、メキシコシティ南西コヨアカン地区の閑静な住宅地ある、目にも鮮やかな青壁に囲まれた瀟洒な建物である。フリーダ・カーロについては、数年前にも映画が公開され日本でも知名度が高くなっているのでご存知の方も多いはず。私は、5年前、出張で訪れたバンクーバーのとある美術館の特別展でフリーダの自画像と出会ってからずっとこの画家のことが気になっていて、今回は評伝を読み、映画も観て入念に事前学習をした上で訪れることにした。

強烈な自我を意識させる作品の数々は、フリーダの凄惨な人生を抜きにしては語れない。幼少時から身体的・精神的に痛ましいほどの傷を受け、自己の存在を強く意識せざるを得なかったフリーダからすると、『自分失くしの旅』などとほざく私はなんとおめでたい人間か・・そんなこと考えながら半世紀以上前のこの館の女主のありし日に思い馳せる訪問となった。

虚飾や欺瞞を嫌い、生涯で30回以上の大手術を受けざるを得ないような身体になってそれでもなお最終的に人生を肯定したその真摯な姿には共感する人も多いのでは。フリーダのそれが決して安直な生命賛歌でないことは、彼女の人生を知れば容易に理解できる。興味のある方は、中公文庫から出版されている堀尾真紀子著『フリーダ・カーロ:引き裂かれた自画像』をぜひご一読あれ。

ちなみに、この『青い館』には政治亡命中のトロツキー夫妻も2年ほど滞在し、その間フリーダとトロツキーは不倫関係にもあったとか。トロツキーが暗殺された邸宅は3ブロックほど離れたところにあり、今は記念館になっているようでした。

0 件のコメント: