2008/03/25

The Kite Runner - Khaled Hosseini

旅記録ついでに、旅の道中に出会い(読み)、感動が深く心に刻まれた本もいくつか紹介していきたい。まずは、以前から旧同僚に薦められていた『The Kite Runner』から。

この本は、Khaled Hosseini(カレド・ホセイニ)というカリフォルニア在住のアフガニスタン出身の医師(1980年に米国へ政治亡命)によるデビュー小説。北米では2003年に出版され、300万部を超える大ベストセラータイトルとなってる。去年、マーク・フォスター監督によって映画化*され、今春、日本でも『君のためなら千回でも』というタイトルで全国上映される予定だとか。(ちなみに翻訳本はハヤカワepi文庫から出版。) 上映予定や話の粗筋についてはこちらのサイトが詳しい。 http://eiga.com/official/kimisen/

(オフィシャルサイトはこちら →  http://www.kiterunnermovie.com/
 
いや、泣いた泣いた、泣きました。ここまで強く心に響く本に出会ったのはいつぶりだったか、とにかく最後の方は涙腺が緩みっぱなしだった。(人生最初に大泣きした映画が小学校低学年の頃に見た『南極物語』だったのは覚えているけど。) この作品には友情、信頼、裏切り、罪の意識とあがない(このあたりは漱石の「こころ」にも通じる人間の本質か)、家族の絆、淡い恋、『許す』という真実の愛と勇気等々、小説に必要とされるあらゆるテーマがてんこ盛り。そして、これらの要素が冷戦という時代に振り回されるアフガニスタンを舞台とした二人の少年の数奇な運命を通して、複雑ながらも絶妙に織り交ぜられている。小説の前半では、ロシア侵攻前の平和な時代のアフガニスタンとそこに住む人々の素朴な生活の情景が美しく描き出されているし、日本語訳のタイトルともなった小説最後の一文 “For you, a thousand times.”(「君のためなら千回でも。」)という台詞はどこまでも温かく、希望に満ち溢れていて、読む者の心を掴んで放さない。(この台詞にどういう意味が込められているのか。それは読んでのお楽しみ。) これがデビュー作という作家の文章・表現力は本当に驚くべきものがある。

昨年の映画化とデビュー作に続く書き下ろし第2弾『A thousand of Splendid Suns』の出版時期とが重なってか、必ずと言っていいほどこの本が平積みになっていた。たまたま手持ちの本をすべて読み終えていて、時間潰しのつもりで何気なく買った1冊がここまで感動を与えてくれるとは。

良い本、好きな作家に巡り合えた時というものは、人との出会いと同じぐらい人生を豊かにしてくれるものですね。

*今日(3月26日)、都内に映画を観に行って来たけど、原作と比べると正直がっかり。原作に忠実ではあるものの、主人公の複雑な心の動き、機微に触れながら最後のクライマックスで涙するには端折っている部分が多く、展開が速すぎて2時間という枠に全てを収めるのにかなり無理しているという印象だけが残った。出来た小説の映画化にはよくある話ではあるけれど。

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