海外を旅して出会うのは、何も人や土地だけではない。日本において自分のすぐ身近に存在しながらもこれまでまったく無縁で過ごしてきたものに、ひょんなことで道中初めて出くわすこともある。『わっ、これはまさに“Shall We ダンス?"の世界だ。』
私にとってのそれは、社交ダンスだった。ここ10日ほどアムステルダムで世話になっている17年来の旧友Rは、大学留学時代以来社交ダンスを趣味としている。仕事でほぼ毎週のように欧州域を駆けずり回る多忙を極める身にもかかわらず、週2回はスクールに通う熱の入れよう。今週末はアムステルダム近郊でオランダのアマチュア選手権があるというので、応援も兼ねて同行させてもらった。
1996年に大ヒットした周防正行監督の「Shall We ダンス?」は、日本国内に空前の社交ダンスブームを巻き起こした。(最近は芸能人とプロの社交ダンスのテレビ番組が放送されていてブーム再来なんだとか。)海外でも、数年前にハリウッド版がリメークされるほど人気が高い。(毎日通勤電車に揺られ日々悶々と過ごしていたしがない会社員が社交ダンスを通じて徐々に再生していくという日本的要素を大いに含むプロットが、中庸でいることを必ずしも徳としない弱肉強食アメリカ社会を舞台に、色気ムンムンのリチャード・ギアとジェニファー・ロペス主演で果たしてどこまで上手く馴染むように再現できているのか気になるところだけれど・・・ハリウッド版を見られた方の感想はいかがでしょう?) 草刈民代の目を覆いたくなるような演技を差し引いたとしてもこの映画を「邦画お気に入りTop10」として評価し、「Shall We ダンス?いいよね」と話す外国人に出会う度になぜだか誇らしい気分になる私にとって、実際に社交ダンスを間近で鑑賞したことはまるで映画の中にいるような感覚だった。
ワルツ、タンゴ、クイックステップ。ルンバにチャチャチャ、パサドブレ。1種目ごとに与えられた1分30秒という僅かな時間内で、判定員に向かって互いにぶつかりそうになりながらも必死に自分達の美と技術をアピールしようとする選手たち。入れ替わり立ち代り競技が進行してゆくのを会場の傍らでボーっと眺めながら、これまで映画の中の話で終わっていた社交ダンスという未知の世界に、これほど競技人口がいたという事実に驚いた。(友人Rに言わせれば、日本では選手たちの気合のレベルがオランダとはまた異なるらしい。いわゆる「スポ根、大会系」の世界なのでしょう。)残念ながら、友人とダンスパートナーのカップルは決勝には進めなかったものの(素人目からするとなかなかの踊りを披露したと思われたけれど)、ダンサーの中には、オランダ版草刈民代ともいえる抜群のプロポーションをもった綺麗どころありいの、“竹中直人”風熱気ムンムン系ありいの、まるでボンレスハムが踊ってるような出で立ちの“渡辺えり子”風ありいので、視覚的にも大いに楽しませていただいた。 ここで私が何の話をしているやらさっぱりわからない方、まだ「Shall We ダンス?」をご覧でないですね。次の週末にでもDVDでも借りて、ぜひ一度ご鑑賞ください。
午後に上級の部を見てから、夜はダンスパートナーのお母さんの手作りアルメニア料理に舌鼓。 二人には、美味しいものを食べて、ぜひ3週間後の次のコンペで入賞めざして頑張ってほしいものだ。今日は、目にもお腹にも、どうもご馳走さまでした。
追伸: え? 私もこれをきっかけに社交ダンスやったらどうかって?いやいや、それは滅相もございません。自分なくしの旅(To be nobody)に出ているものにとって、社交ダンスはその対極をいくものでありますからネ・・・。






今日は9月28日*。今はエーゲ海の島々(ギリシャには3000以上の島があるそうな)の中でも超高級リゾート地として知られるミコノス島に来ている。個人的には、庶民的なサモス島の方が気に入っていたので、私のような取り立てて金持ちでもない人間がなんの因果でこんな島にいるのかよくわからないのだけど、トルコの旅行代理店が適当にプランを組んでしまったから仕方がない。 たかだか100%野菜ジュース1本(1l)に400円も払うようなボッタクリ島では(円安ユーロ高ということも影響しているけれど)何をしようにもやる気は失せるし、昨日から少々体調を崩していることもあるので、今日は部屋で何もせずのんびりしている。明日は再びフェリーでアテネに向かい、夜9時半発の飛行機でオスロ入りしてそのまま空港泊になるからね。今日のうちに体力を養っておかないと。