2007/10/29

未知との遭遇: 社交ダンス編

海外を旅して出会うのは、何も人や土地だけではない。日本において自分のすぐ身近に存在しながらもこれまでまったく無縁で過ごしてきたものに、ひょんなことで道中初めて出くわすこともある。

『わっ、これはまさに“Shall We ダンス?"の世界だ。』

私にとってのそれは、社交ダンスだった。ここ10日ほどアムステルダムで世話になっている17年来の旧友Rは、大学留学時代以来社交ダンスを趣味としている。仕事でほぼ毎週のように欧州域を駆けずり回る多忙を極める身にもかかわらず、週2回はスクールに通う熱の入れよう。今週末はアムステルダム近郊でオランダのアマチュア選手権があるというので、応援も兼ねて同行させてもらった。

1996年に大ヒットした周防正行監督の「Shall We ダンス?」は、日本国内に空前の社交ダンスブームを巻き起こした。(最近は芸能人とプロの社交ダンスのテレビ番組が放送されていてブーム再来なんだとか。)海外でも、数年前にハリウッド版がリメークされるほど人気が高い。(毎日通勤電車に揺られ日々悶々と過ごしていたしがない会社員が社交ダンスを通じて徐々に再生していくという日本的要素を大いに含むプロットが、中庸でいることを必ずしも徳としない弱肉強食アメリカ社会を舞台に、色気ムンムンのリチャード・ギアとジェニファー・ロペス主演で果たしてどこまで上手く馴染むように再現できているのか気になるところだけれど・・・ハリウッド版を見られた方の感想はいかがでしょう?) 草刈民代の目を覆いたくなるような演技を差し引いたとしてもこの映画を「邦画お気に入りTop10」として評価し、「Shall We ダンス?いいよね」と話す外国人に出会う度になぜだか誇らしい気分になる私にとって、実際に社交ダンスを間近で鑑賞したことはまるで映画の中にいるような感覚だった。

ワルツ、タンゴ、クイックステップ。ルンバにチャチャチャ、パサドブレ。1種目ごとに与えられた1分30秒という僅かな時間内で、判定員に向かって互いにぶつかりそうになりながらも必死に自分達の美と技術をアピールしようとする選手たち。入れ替わり立ち代り競技が進行してゆくのを会場の傍らでボーっと眺めながら、これまで映画の中の話で終わっていた社交ダンスという未知の世界に、これほど競技人口がいたという事実に驚いた。(友人Rに言わせれば、日本では選手たちの気合のレベルがオランダとはまた異なるらしい。いわゆる「スポ根、大会系」の世界なのでしょう。)

残念ながら、友人とダンスパートナーのカップルは決勝には進めなかったものの(素人目からするとなかなかの踊りを披露したと思われたけれど)、ダンサーの中には、オランダ版草刈民代ともいえる抜群のプロポーションをもった綺麗どころありいの、“竹中直人”風熱気ムンムン系ありいの、まるでボンレスハムが踊ってるような出で立ちの“渡辺えり子”風ありいので、視覚的にも大いに楽しませていただいた。 ここで私が何の話をしているやらさっぱりわからない方、まだ「Shall We ダンス?」をご覧でないですね。次の週末にでもDVDでも借りて、ぜひ一度ご鑑賞ください。


午後に上級の部を見てから、夜はダンスパートナーのお母さんの手作りアルメニア料理に舌鼓。 二人には、美味しいものを食べて、ぜひ3週間後の次のコンペで入賞めざして頑張ってほしいものだ。

今日は、目にもお腹にも、どうもご馳走さまでした。

追伸: え? 私もこれをきっかけに社交ダンスやったらどうかって?いやいや、それは滅相もございません。自分なくしの旅(To be nobody)に出ているものにとって、社交ダンスはその対極をいくものでありますからネ・・・。

2007/10/14

Random quotes to remember the stay in Stockholm...



"Now at my age (mid-thirty), I feel like it is time for me to give and share something with others, instead of getting something for myself."

"Sayaka, we are not tourists. We are travellers."

"When people tell me they are jealous of me doing this travel, I always ask them a question, what about you? why don't you do it? Most people say many excuses for not doing the same, but it is their decision, it is their choice! In the end, realistically speaking, most people are afraid of losing what they have now or do not wish to risk it. But I make my decisions. Because this is my life and I know I am responsible for whatever I decide to do. We are brave, sayaka. You and I are brave to say "No" to what we've got; such as work, income, apartment, family, etc."

"Why did so many people have to die and I survived? (referring to her Tsunami experience) Ever since that time, I am always looking for the meaning of life. And I also try to enjoy every moment, every minute of my life - this is why I keep on traveling.

(All quotes made by a lady from Taiwan I met in Stockholm YH, a survivor of the Tsunami in Indonedia in Dec 2004, a life-time traveler with her own business, and one of the most beautiful persons I've met who seem to know what life is all about)

"Photography 'was invented' out of a desire to reproduce the world we see about us. It arises from the interplay of light, optics, technology and people - both observing and observed. The presence of photographer results in an image that appear to freeze a moment of reality."

(From the "Images in Time" exhibition at Nordic Museum in Stockholm, photographs from the Nordiska musee archives)

2007/10/11

ただいま、ストックホルムに向けて移動中・・・

   

またまたブログ更新から暫く足が遠いてしまい、スミマセン。皆さま、それぞれに秋をお楽しみのことと思います。日本では金木犀が薫り、スーパーに柿や梨、松茸が並び(松茸なんて匂いかぐだけでまともに買ったことないけれど)、脂ののった秋刀魚が美味しい季節でしょうか。ここ、スカンジナビアも紅葉が真っ盛り。それでも気温は東京でいう真冬並みになってきていて(~摂氏10度)、冬服を持ち合わせていない私は服を5枚ほど重ね着してモコモコになりながら毎日を凌いでいます。決してファッショナブルとはいえないけれども背に腹は変えられない。まあ、日本でもファッションにはどちらかというと(平均的な女性を基準とすると)無頓着な人間だったので、大方の人は私がどんな格好でいるかは容易に想像つくでしょう。

 
(マルメの市立図書館)

とりあえずここ2週間あまりの足取りをまとめると、先月末にアテネからオスロに移った後、ソグネフィヨルド観光→ベルゲン→マルメ(ルンド・コペンハーゲン)→ヨーテボリときて、ただいま高速列車X2000に乗ってストックホルムに移動中です。(X2000は日本でいう新幹線なみの高速列車で、1等車は無線LAN、コーヒー、果物、軽食がすべて料金に含まれていて誠に快適、快適。スウェーデンに来る機会があれば一度はぜひお試しを。) 

ここのところ美術館、博物館めぐりに少々疲れ(消化不良)気味だったこともあり、美しい公園がたくさんあるマルメでは散歩したり(「ニルス」の国だけあって公園にはガチョウがわんさかと屯っています)、図書館で読書したり、友人とカフェでお茶したりとのんびりすごし、昨晩はヨーテボリの友人宅でスペイン産赤ワインと福井の『黒龍』(日本国内でもどの居酒屋にもおいてあるというわけではないお気に入りの日本酒をヨーテボリで味わうなんて、なんという運命的巡り合わせ)を飲みながらお好み焼きをつくり、旧交を温めました。“おたふくソース”がなくても、オイスターソース、醤油、Sweet&Sour Sauceでそれなりの味に。調味料がそろってなくても、あるものでなんとでもできるもので・・まあ、これが料理の醍醐味でもあるわけです。

 
(赤ワインを飲みながら、フォークとナイフでお上品にお好み焼きを食べるところがまた新鮮な経験だったりする。日本ではあまり考えられない取り合わせですからネ。)

写真も整理しないうちに膨大な数に膨れ上がってしまい、数日おきに移動している身では手に負えない状態に。今週末、欧州の拠点となるアムステルダムの親友宅に移ってからゆっくりと整理し、ブログにも纏めていくつもりなのでしばしお待ちを。

以上、簡単ながら近況報告まで。

2007/10/01

ちょっと心温まるお話 ~Some heartwarming story to share~

今日は9月28日*。今はエーゲ海の島々(ギリシャには3000以上の島があるそうな)の中でも超高級リゾート地として知られるミコノス島に来ている。個人的には、庶民的なサモス島の方が気に入っていたので、私のような取り立てて金持ちでもない人間がなんの因果でこんな島にいるのかよくわからないのだけど、トルコの旅行代理店が適当にプランを組んでしまったから仕方がない。 たかだか100%野菜ジュース1本(1l)に400円も払うようなボッタクリ島では(円安ユーロ高ということも影響しているけれど)何をしようにもやる気は失せるし、昨日から少々体調を崩していることもあるので、今日は部屋で何もせずのんびりしている。明日は再びフェリーでアテネに向かい、夜9時半発の飛行機でオスロ入りしてそのまま空港泊になるからね。今日のうちに体力を養っておかないと。
(*ブログを更新した10月1日現在、オスロ市内にいます)

というわけで、最近あまり更新できていなかったブログネタを今のうちに書き溜めておこうと、エーゲ海を眺めながらテラスでPCに向かってせっせと打ち込んでいるわけでありますが、今日は先日のエフェス・ツアーで知り合ったボストン在住の米国人夫妻から聞いた心温まる話について書こうと思う。

とその前に、簡単にご夫妻のことを紹介しよう。年齢はすでに70歳近く、なのにお二人とも何とも驚くべきアスリート。奥様の方は90日間かけてアパラチア山脈をトレッキングで縦走したというし、ご夫婦では数年前に4ヶ月かけて西海岸オレゴン州から東海岸はボストンまで自転車で横断したという。距離にして、ざっと4,300マイル(約6,900キロ)!わずか9日間、しかもたかだか500マイル(800キロ)の四国サイクリングなんて、何ともちっぽけなスケールの話ではないか・・・とすっかり感服していたら、ご夫妻は自転車旅行中に70代半ばにしてトライアスロンに参加しているという老女に出会ったという。何とも、上には上がいるもので。

で、お二人から聞いた小話というのも、北米自転車横断旅行中のお話。

ある日、パンクが続いて自前のスペアタイヤがなくなってしまったという。しかも、周りは集落らしきものは何も見当たらない平野のど真ん中。修理しようにも水も何もない。なすすべもなく困り果てていると、そこに通りがかった車から中年男性が出てきてどうしたのかと尋ねてきた。これこれしかじか事情を説明すると、男性が携帯電話で妹に電話をかけ、彼女が自転車屋にいって必要なサイズのタイヤを購入してもってきてくれるという。待つこと1時間半(街からは車でもかなり離れていたらしい)、スペアタイヤが到着し、パンク修理は無事成功した。

なんとお礼を申し上げればよいのやら、自転車のタイヤごときに1時間も運転して駆けつけてくれたお礼を是非させてくれと申し出る夫妻に対し、その女性はこう応えたという。(この台詞を私に話す前、旦那さんが「僕はこの言葉を一生忘れないよ」と前置きしていたのが印象的だった。)

『お礼はいりません。その代わりに、この先、あなた方が同じように困っている境遇の人に出会ったら、その方を同じようにお助けなさってください。』 (“When you meet someone on the road who is in need, please do the same thing to the person.”)

人から親切を受けた時、通常は恩恵を与えてくれた人に対しお返しをする相互やり取りで終わってしまう場合が多い。それはそれで問題はないのだけれど、感謝の気持ちを自分でなく不特定他者に向けて親切を施すことによって具現化してださいと話したこの女性の慈悲深さに、私は何ともいい難い感動を覚えた。恩返しとは必ずしも二者間で完結するものではないということを。これを愛と呼ばずになんといおう。

悪天候でエーゲ海フェリーがキャンセルになり、代理店との旅程調整が二進も三進もいかずささくれ立っていた心をちょっと優しい気持ちにさせてくれた、そんなお話でした。